(この公演もタイトルが結構長いね)
プログラムを500円で売っていたのですが、ダンサーの経歴は詳しく載っているが作品の解説は皆無という「へ?」なものでした。
現代作品も上演しているのに、これでは困りますよねえ。発表会じゃあるまいし。
一方、各演目が始まる前にタイトルと出演者名のアナウンスがあったのは親切でよかったです。
これも発表会仕様のような気はしますが、ガラ公演だと「これなんだっけ? 誰だっけ?」になっても、舞台が暗いとプログラムで確認できなしし、なまじ舞台が明るい演目だと読んでいる間には舞台の上を見られないし。
世界バレエフェスなんかももこういうふうにしたらいいんでは? と思ったり思わなかったり。
第1部
『パキータ』
作曲:L.ミンクス 振付:M.プティパ
松田敏子/小嶋直也
平林万里 石川真理子 久保茉莉恵 松本真由美
4人のソリストとコール・ド(8人)は、黒の上に渋い金を重ねたチュチュ。上品ですてきな衣裳でした。松田さんは真紅で、もしかすると、去年見たキトリと同じかな? 小嶋さんも、バジルの衣裳でタイツを白にしただけかも。
コール・ドは、悪くなかったです。というか、やっぱこの作品にはコール・ドは不可欠だよね〜、と思えるくらいにはよかったです。
ソリストは皆さんそれなりに。中では、時にはパキータ役が踊ることもあるちょっともの哀しいゆっくり目の曲で踊った松本さんがエレガント。(山本小糸バレエスクールというところの方だそうです。←この辺はプログラムが充実しているわけよ)
アダージオでの小嶋さんは、そりゃもうかっこよかったです。
パキータ以下全員で迎えられる登場シーンを見ただけで、「うう、見られてよかった」と思いましたもん。(何なんだろうね、あれ。舞台が引き締まる感じなのよね。華とかオーラとは違うと思うのよね)
ポーズは美しく,動きはなめらか。リフトは高く,サポートはスムーズ。
要所要所(というか,何も振りがないところというか)で颯爽と片腕をを広げるのが,このパ・ド・ドゥの祝典的な雰囲気を彩っておりました。
松田さんは,華と貫禄があり「これぞ主役」という感じなのですが,上半身のエレガンスが不足気味。
(もしかすると,小嶋さんと踊るからそう見えてしまうのかしらん。彼のパートナーが酒井さんだったころ,彼女に感じた不満と近いような気がする)
さて,小嶋さんのヴァリエーションですが,私,不覚をとってしまいまして・・・。
ソリストのヴァリエーションが終わってから出てくるんだろうと思い込んでいたら,2人終わったところでいきなり小嶋さん登場。
「心の準備がぁ」だったし,それにですねー,全然確信は持てないのですが,音楽が普通の男性ヴァリエーションのと違ったような気がして「え? そうだっけ? これだっけ? 振りが違う? いや同じか?」とかあたふたしているうちに終わってしまいました。(しくしく,間抜けだわ)
あ,きれいでしたよ。堪能し損ねただけで。
続いて松田さんのヴァリエーションがあって,ソリスト2人も踊って,コーダ。
コール・ドが踊る中に登場して,アントルシャ・シスの連続を見せて(足はいつもどおり美しく軽やかだったが,上半身イマイチ),あとはマネージュ。普通に回っていましたが,そのスピード感と大きさといったら♪ なんか2週くらい回った気がしたし(←もちろん気のせい),舞台から落ちるんじゃないかと思っちゃうような迫力でした。
続いて,松田さんがダブルを織り交ぜたフェッテを見せているのを後ろからサポートに入って、華やかにリフトして終わりました。
うん,すてきでしたわ〜。
『パキータ』は,彼が新国で踊っていた最後のころ上演されて,平日だったせいで見逃した演目だったのです。
新国の舞台でないのはもちろん残念ですが,今回見ることができ,想像どおりアダージオでかっこよくいろんなポーズを決めてくれたので,宿願(←おおげさー)の一つが成就しました。
うふ,幸せ♪
ということで,私としてはこれで公演が終わっても差し支えなかったのですが,もちろん続きがありますです。
『ゼンツァーノの花祭り」よりグラン・パ・ド・ドゥ
作曲:E.ヘルステッド 振付:O.ブルノンヴィル
福谷葉子/平野亮一
福谷さんは,京都で教室を主宰している方だそうで,その経歴からするとけっこうベテランなのかもしれませんが,このかわらしいパ・ド・ドゥを踊るのに問題ない感じ。(それとも若いのか?) マイムでも踊りの細部でも,上手に愛らしさを表現しておりました。
平野さんはロイヤルの公演で見てはいますが,パ・ド・ドゥで見るのは初めて・・・だと思います。たぶん。
背が高い上に,男性的なお顔立ちのため,このパ・ド・ドゥの「若い恋人同士がじゃれあっている」雰囲気には少々そぐわないような? 踊りは,背が高くてもブルノンヴィルって踊れるのね〜,けっこう器用なのね〜,という感じ。身長差がありすぎて,サポートに苦労している感じが見えてしまったのが気の毒でした。
『エスメラルダ』よりヴァリエーション
作曲:R.ドリゴ 振付:ベリオゾフ
福田圭吾
ヴァリエーションだけの出演が混ざると,雰囲気が一気に発表会化しますなー。
福田さんは,それなりにテクニックが強いようで,よろしいのではないでしょーか。新国のソリスト目指して,一層ご精進ください。
『白鳥の湖』よりパ・ド・ドゥ
作曲:P.チャイコフスキー 振付:M.プティパ
田中ルリ/原田高博
田中さんは,以前よりほっそりしたみたいで,オデットの衣裳がきれいに似合っていました。
原田さんがダンサーとして登場したのには驚きました。(かの「赤い靴」主演・ゆうきみほさんのパートナーだった方ですよね) で,当然と言うべきでしょうねー,視覚的に王子にはかなり無理がありました。
双方とも,切々たる雰囲気は表出されておりまして・・・そうですねー,不倫関係にある男女が駆け落ちしようか,ともに死のうかという道行き(音楽は浄瑠璃)みたいな・・・。
『白鳥』とは違う話になっていましたが,風情があって結構だったと思います。
『バラの精』
作曲:ウェバー 振付:M.プティパ
楠本理江香/恵谷彰
楠本さんは本田道子バレエ団所属だそうです。えーと,それで・・・おいくつか存じませんが,容姿がベテランな方でして,舞踏会デビューの少女には見えにくかったです。
恵谷さんは,よかったですよ〜♪
跳躍も回転もきれいなテクニックですし,ポール・ド・ブラも合格点。
きれいに筋肉がついた身体だから,清潔な色香・・・生身の男臭さはなくて,でも男の色気ではある感じ・・・もありました。
衣裳の趣味もよかったです。肌色に近いピンクから濃い目のピンクまでのグラディエーション。
意外にお帽子も似合って,いいダンサーですよね〜。好きだわ〜。
『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
作曲:L.ミンクス 振付:M.プティパ
的場涼香/沖潮隆之
的場さんは北山大西バレエ団の所属だそうですが,先日『くるみ』のチャイナで見て歯切れのよい踊りが印象に残っていた若いバレリーナさん。
パ・ド・ドゥ経験はあまりないのかな? 折り目正しいというか硬いというか・・・な感じは受けましたが,しっかりと踊っていて好感を持ちました。
沖潮さんは,踊りはどうってことないですが,細部が「いかにもバジル」で,プロですねえ。
先日の発表会では白い衣裳だったのに,今回は的場さんの赤+黒の衣裳に合わせて黒の上下で登場。プロですねえ。
『Room』
振付:中村恩恵
野間景
暗めの照明の中,肩ストラップとふくらはぎ丈の薄紫の衣裳で踊られるソロ。足元は,たぶんバレエシューズ。
音楽についての表記がなかったので的外れかもしれませんが・・・バロックと言えばよいのでしょうか,バッハより前と言えばよいのでしょうか? オ−ケストレイションの厚みがなく,古雅な印象でした。
中村さんの振付作品を見るのは初めてですし,師匠(?)のキリアンの作品もたいして見ているわけではないので,これも的外れかもしれませんが・・・キリアン系だけあって「床の上を転がる」的な美しくない動きがないのがよいなー,見ていて快い作品だなー,と思いました。
見ながらやはり「Room」という表題が気になったわけですが,そうでうねー,「自分の居場所」とか「いるべき場所を見出す」」とか,そんな意味があるのでしょうか?
自ら進んで現代作品を見にいくことのない身としては,意外なところで中村作品を見られてラッキー♪ であるのですが,なぜこの催しにこういう作品が登場したのか不思議でもありました。
後から調べたところ,野間バレエ団では,彼女を招聘しての公演を行っているのだそうですね。(ほぉ)
『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ
作曲:A.アダン 振付・M.プティパ
吉田千智/福岡雄大
K★CAMBER COMPANYの若い2人が出演。とってもよかったです♪
吉田さんはたぶん初見ですが,「そうそう,メドーラはこういう方に踊ってほしいのよ〜♪」というバレリーナさん。
ほっそりとして,腕も脚も長く,お顔は小さく,首も長くたおやか。華はもうちょっとかもしれませんが,たおやかで,若々しい品のよさが感じられる踊り。好みだわ〜。
衣裳がチュチュだったのも,好みでした。
福岡さんは,国内・海外のコンクールで多くの受賞歴を持つ方ですから「お名前はかねがね」ですし,昨年現代作品で見て「よいなー」だったので,期待を持って臨みました。そして,期待どおりよかったのでした。
すらりとした身体つきでかっこいいですし,テクニックも立派。最近流行りの,身体を斜めにしながら360度回転する技など見せていましたし,マネージュでは「おお,舞台から落ちそうなスケールで踊れる人がここにもいた」と。
このパ・ド・ドゥ独特の振りも板についていましたし,細かいところの見せ方に工夫があるのもよいです。「もうちょっとていねいなほうが・・・」と思う瞬間もあったのですが,王子でなく海賊ですもんね。
なお,メイクはもっとナチュラルなほうがよいかも。
今度新国にソリストとして入団して『ドンキ』に主演するそうですが,楽しみにしてよいと思いますよ〜。
というか,バジルで選ぶなら,私は福岡さんの日にします。山本さんよりテクニシャンだし,トレウバエフよりプロポーションがよいし,(最近見ていないからちょっと自信がないですが)芳賀さんよりきれいに踊りますもん。
第2部
『レハールのワルツ』
作曲:F.レハール 振付:漆原宏樹
女性12人が踊る作品。たぶん,皆さん,MRBの方だったのではないか,と。
つまらなかったですが,それはおそらく振付の責任でしょう。
左右とか前後とか斜めとかに,4人×3か6人×2が整列して動いているだけで,見るべき舞台の芯がないし,高さの変化も乏しい。要するに平板で盛り上がりに欠けていて,その割りに長くてさー。
あ,衣裳はすてきでした。グレイッシュなパープルのロマンチック・チュチュでとても上品。
『ラ・シルフィード』よりパ・ド・ドゥ
作曲:H.ルーベンシュキョル 振付:O.ブルノンヴィル
竹中優花/武藤天華
貞松・浜田バレエ団のペアですが,うーむ,よくなかったですねえ。
竹中さんは,マイムが愛らしくてシルフらしさはあるのですが,踊りに軽やかがないのが難。
武藤さんは元気がありすぎる踊り。これに比べると,最初に同じブルノンヴィルを踊った平野さんはえらく上手だったよなぁ,と思ってしまいました。
えーと,男性の衣裳は赤系だったかな?
『パキータ』よりヴァリエーション
作曲:L.ミンクス 振付:M.プティパ
中野吉章
中野さんは法村友井出身のお母さんのバレエ教室(エリート・バレエ・スタジオ)の所属という表記でしたが,法村の団員でもあるようです。近々海外進出予定の21歳。(20歳かも)
どういう目的でこういう方を出演させるのか理解に苦しみますが(いや,下手ではないですけれどね),海外でのご活躍を祈ります。
『Violet−moon』
作曲:川井郁子 振付:石川愉貴
谷吹知早斗/石川愉貴
えーと,音楽はアルゼンチンタンゴ・・・じゃないし,何と形容すべきか? と思ったらヴァイオリニストの川井郁子さんが作曲した現代モノらしいです。
パープルの簡素なドレスにトウシューズの女性とやはりパープルのブラウスに黒いズボンの男性がバレエ技を取り入れた,見せるためのソシアルダンスを踊る・・・という感じ。
私はバレエ・フリークですので,こういう作品は品が下がる気がしてしまうのですが,同じような古典のパ・ド・ドゥだけ続いても飽きますので,変化をつける意味ではよかったのではないか,と。
『アルレキナーダ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
作曲:R.ドリゴ 振付:M.プティパ
柳原麻子/法村圭緒
法村さんのハーレキンが,とってもよかったです♪
前脚のの膝を軽く立てて右の人差し指で下の方を差す仕種とか,両脚を後ろに跳ねてぴょんと跳ぶところとか,膝を高く上げながら弾むように前に歩く振付とか・・・要するに,このパ・ド・ドゥ独特の振付が板についていて,スムーズ。そして,スムーズに振りをこなすことにより,とってもチャーミングが趣が出ていました。(カワイイのだ)
ソロについては,今まで見たロシアのダンサーとつい比べてしまい「テクニックがもうちょっと」だとは感じましたが,でも,「役を表現する」という意味では,その辺のロシアのダンサー(例:クズネツォフ,コルサコフ)よりずっとよかったと思いますよ〜。
柳原さんは,赤基調で裾のほうが白のチュチュ。このパ・ド・ドゥらしく三角帽子(?)を着けているのがお顔の丸い輪郭とあいまって愛らしく,こちらもチャーミングでした。
先日オディールを見て感心したときほどの輝きは感じませんでしたが・・・そうですねー,法村さんがあまりにはまっていたので喰われちゃったのかな?
『RAIN』
作曲:FAIN FEDEEERSEL 振付:田中祐子
田中祐子
椅子にすわったダンサーが和風の傘を広げた陰に身を隠しながら傘を回し,まるで傘の下に2本の脚が生えているよう・・・というシーンから始まり,途中に,「あら,雨が上がった・・・」と「あ,また雨が・・」を経て,最後は舞台中央の椅子に戻って傘をかざしてのラストまで。
たしか,バレエシューズで踊られていて,衣裳は黒。ボロボロ・・・には見えませんが,裾のギザギザしたカットとか,上半身の空き具合などから,そういう雰囲気を出したかったのかなー,と思います。
田中さんは表現力のあるバレリーナだと思いますが,「ソロで客席を引き付けるのは難しいですよねえ」という感じ。
特に引き込まれないで終わりました。
『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
作曲:G.プーニ 振付:M.プティパ
法村珠里/山本隆之
法村さんは,メイクも含めてコケティッシュな感じを上手に見せていました。
山本さんは,お気楽で楽しげな雰囲気を漂わせていてるのがよかったです。
(でも,このパ・ド・ドゥって,私にはあんまり面白くないのよね)
『Ado』
作曲:矢上恵子オリジナル 振付:矢上恵子
矢上恵子 福岡雄大 福田圭吾
すっげーかっこよかったです。
暗めの照明の中,電子音の音楽とともに超高速で踊られるコンテンポラリー。ブレイクダンス? ヒップホップ?な動きも取り入れ,側転なんかもあって,とにかく超高速。
近未来SF的メイクとヘアで,男性2人はアイマスクもつけていたような?(それで踊るのもスゴイことだよね,たぶん)
福岡さんと福田さんは見分けがつきませんでしたが,えーと黒いほうが福田さんで白いほうが福岡さん? いずれにせよ,2人ともかっこよかったですし,矢上さんはさらにかっこよく。
表題の意味とか,作品の趣旨とかはわかりませんが,そんなことどうでもいいわね。とにかくかっこよかったから。
フィナーレは,まずコール・ドやツループで踊った皆さん,次いで一組ずつ出てきてレベランスして・・・その後全員手をつないで,という感じ。
小嶋さんは,最初のうちは初参加者らしく大人しくしていたのですが,結局タイミングなどを仕切っておりましたよ。うふふ。
さて,もうちょっと追憶に浸っていたい気分ではあるのですが,世界バレエフェスが始まっておりますのでね。
今から
Bプロを見にいってきますです。
個人的見どころ
1 大好評のシムキンはどんなでしょ?
2 ヴィシニョーワ/マラーホフが『ル・パルク』を踊る???
3 『ベラ・フィギュラ』って見たことないのよ。